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EAST OF EDEN のすめらぎやしろと、茶々山商会の茶々山悠の二人でリレー小説をアップする場です。
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無題



携帯を閉じて、嶋本はため息を吐いた。
結局、2人の遠距離恋愛は、その後数ヵ月で終焉を迎えた。
真田や嶋本が移動により同じ職場になった訳でも、
2人が別れた訳でもない。
真田が、より一層遠い場所へと派遣されてしまったのだ。
世間一般とは違うのだろうが、会える努力をすれば会える
距離にいないと、お互いにどうでも良くなる性質らしい。
冷める訳ではないが、元気にやってくれているのなら、
それで良いと言う気持ちになる。
もちろん会いたいし、声が聞きたいし、それで寝付けない
夜もある。それはそれで、恥ずかしいやら情けないやらで
色々複雑なのだが、そんな感情は自分で処理すべき
問題だと思っている。
国単位で離れてしまえば、お互いの意思だけでどうこう
出来る事は限られている。
携帯メールで連絡を取り合うのも、時差があれば難しく
なり、PCメールで絵葉書の様なメールを受け取るのみとなる。
大量の写真に、「元気です」とだけ添えられたメールは
素っ気ないが、いかにも真田らしくて苦笑が浮かぶ。
それに対して自分の送るメールは、まるで取りとめのない
世間話の様な内容で、交互に互いが送ったメールを
読んでいると、とても恋人同士のメールとは思えない。
それでも、携帯電話でやり取りしていた頃はそうでも
無かっただろうと思い読み返していると、それはそれで
支離滅裂で頭が痛くなった。

「嶋本さん、どがぁかしましたか?」
「…いや、何でもない」

大羽に声をかけられ、嶋本は片手を上げて見せる。
こんな場で思い悩む事ではないと思いつつも、視界の端で
笑う男の姿に大いに動揺させられているのだから仕方がない。

「にしても、軍曹は知ってました?真田さん帰ってくるの」
「なんで、俺が。超能力者でも何でもないぞ」

気が向いて参加した潜々会。
星野も参加の意思を示していたので、手配を任せられる
気安さからも深く考えずに参加する事にした。
久しぶりに一人で懐かしい場所を歩いてみるつもりだったのに、
何故あの男は突然、心の準備をする間も与えず現れるのか。
潜々会後の行動を考えあぐねていると、まだ握ったままだった
携帯が震えた。
開くと、メール着信一件。


From:真田
Sab:無題
本文:今夜、2人で泊りたい。抜けられるか?


短い内容なので、一瞬で携帯を閉じる。
誰かに見られたら、面倒だ。
汗をかいたビールジョッキを一気に飲むと、人の輪の中から
こちらを覗う真田と目があった。
嶋本が、良く知っている瞳の色だ。

―――どうやら、まだ恋人だったらしいな。

そんな事を思いながら、先程受け取ったメールの内容を
吟味する。
同じホテルに真田を招いてやる事も、抜け出して真田の
プランに乗ってやる事も、可能だ。
可能だが、素直に従うのは癪に障る。

「さて、どうしてやろうかな」

どう返信するか考えていたら、隣に座った大口がゲラゲラ
笑った。

「軍曹、悪代官の顔になってますよ」
「うっさいわっ」

大口を殴りながら真田を見ると、まだこちらを見ていた。
何時も振り回されてばかりなのだ。
たまには、こちらが主導権を握りたい。

「大口、お前まだ隊長としての自覚が足らんのんやないんか?
今晩みっちり教えたろうか?」
「うわぁ、軍曹の個人レッスンですかぁ?なんだか、エロ~ィ」
「なんでやねん」

馬鹿話をしながらも、真田の視線は痛い程に感じていた。
もっと、もっとだ。
もっと、自分の事で頭がいっぱいになれば良い。
同じ空間にいる時くらい。

嶋本は、携帯電話をギュッと握り締めた。






終わり


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